過払い金請求の裁判について【デメリット・費用・流れ】
過払い金請求したい場合、裁判をして解決するのか、裁判をしないで解決するのかを決める必要があります。裁判をしない場合は、「和解交渉」と呼ばれる方法で解決を目指すことになります。簡単にいえば「話し合い」で解決をするということです。
「裁判をしないで過払い金を取り戻せるのであれば、それに越したことはない」と考える人もいるかもしれませんが、和解交渉には大きなデメリットがあるので注意が必要です。それは、過払い金の全額を取り戻すことがむずかしいということです。
■もくじ
過払い金請求を裁判で解決すると満額回収できる
過払い金の請求とは、払い過ぎた利息を返してもらう正当な権利の主張です。しかし、「交渉」である以上、相手が応じなければそれ以上の解決が困難になります。
「グレーゾーン金利」が問題になってから過払い金請求が激増しており、アコムやアイフルなどの貸金業者は経営的に苦しい状況になっています。そのため、返さないといけないお金と認識しているにもかかわらず、簡単には返金に応じてくれません。
和解交渉で全額を返還してもらうことは非常に困難で、半分程度が相場といわれています。そのため、満額を取り戻したい場合は裁判で解決することがもっとも確実な方法です。裁判による請求は、過払い金の100%を取り戻すことが可能です。
過払い金の利息も回収できる
債務者には過払い金の全額を取り戻す権利がありますが、それだけではありません。「過払い金にかかる利息」についても請求する権利があります。ここでいう利息とは、「返すべきなのに返さなかったお金」にかかる利息のことです。
法的な根拠は民法703条「不当利益返還請求権」で、不当に受けた利益については利息を付けて返還しなければならないと定められています。利率については、平成19年2月に最高裁で「過払い金についての利息は年5%」という判決が出ており、年5%の請求が可能です。
過払い金請求の裁判のデメリット
時間がかかる
過払い金を全額取り戻すには裁判がもっとも確実な方法ですが、和解交渉に比べて時間がかかるというデメリットもあります。
過払い金請求の裁判を起こしたからといって、すぐにお金が戻ってくるわけではないので注意が必要です。一般的には4~8ヶ月かかりますので、余裕をもった計画を立てておく必要があります。
裁判費用がかかる
裁判をするには費用がかかるので、あらかじめ裁判費用を計算する必要があります。過払い金が小額だった場合、裁判を起こしても割に合わないというケースもあるのでご注意ください。
自分で裁判する場合のデメリット
過払い金が少なくなる可能性がある
裁判を起こしたからといって、すんなりと解決するとは限りません。さまざまな対抗措置を講じてくる可能性があります。
裁判を長期化させて示談を持ちかけてくるというケースも少なくありません。示談に応じてしまえば返還される過払い金も少なくなってしまうため注意が必要です。
裁判の準備に時間と手間がかかる
裁判を起こすためには多くの書類が必要です。そのため、裁判の準備には時間や手間がかかってしまいます。「訴状」の作成に加えて「取り扱い説明書」や「取引履歴」などを用意する必要があります。
平日に裁判所へ行かなければならない
和解交渉と違い、裁判はスケジュールの調整ができません。裁判の期日は裁判所から指定されます。指定される日は平日になるため、裁判所に行くためには平日のスケジュールを空けておく必要があります。
家族や会社にバレる可能性がある
裁判所に行くために平日に会社を休むと、当然ながら怪しまれる可能性があります。何度も続くようだとバレてしまうリスクもあります。また、自分で手続きをおこなう場合は書類が全て自宅に届くため、家族にバレてしまう可能性が高いので注意が必要です。
裁判をするかしないかの判断基準
貸金業者からの和解額が低い場合
「裁判のような大事にはしたくない」という人や、どうしようか決めかねている人は和解交渉をおこなって様子をみるという方法もあります。実際、和解交渉を持ちかけて満額に近い金額を返還してくれる貸金業者もゼロではありません。
しかし、アコムやプロミスのように多くの過払い金請求を受けている会社の場合、そのような期待はできません。過払い金の返還が会社の経営を圧迫していることもありますが、多くの請求案件をこなすことで交渉にも慣れているからです。
交渉の場ではかなり低い金額を提示されることを覚悟しておく必要があります。提示された和解の金額が低い場合は、裁判をしたほうがよいという判断になります。
過払い金を全額回収したい場合
どうしても全額を取り戻したい場合は、はじめから裁判という選択になります。和解交渉に比べて時間もかかりますが、少しでも多くの過払い金を取り戻したいのであれば裁判以外の方法はありません。
特に過払い金の金額が大きい場合には、示談と裁判とでは大きな差が出てくることに注意が必要です。例えば過払い金が100万円であった場合、50%返還という和解案に応じてしまうと、裁判に比べて50万円以上の損失が発生することになります。
グレーゾーン金利で支払ってしまった金額は、自分で思っているよりも大きいことがほとんどです。正確な金額を知りたい場合は「引き直し計算」をする必要があります。
過払い金請求の裁判で争点になる注意点
同じ貸金業者から借りたり返したりを繰り返している場合(一連と分断の取引)
貸金業者を利用している人のなかには、「一度完済して、同じ貸金業者から再度借入れをする」という方もいるかと思います。このような場合、過払い金請求の裁判で争点となることが多いので注意が必要です。
この場合、最初の取引と次の取引をひとつの取引と扱うか、それぞれ別の取引と扱うかで過払い金の計算が異なります。最初の取引と次の取引をひとつの取引として計算することを「一連計算」と呼び、それぞれを別の取引とする計算を「分断計算」と呼びます。
分断計算にすると、引き直し計算をした際に過払い金の額が少なくなってしまいます。また、古い取引が時効になってしまう恐れもあります。
こういった複数の取引がひとつの契約書に基づく取引の場合は、「一連の取引」として一連計算が認められることがほとんどです。
ただし、完済から次の借入れまでの空白期間があまりにも長い場合は注意が必要です。2~3年などの空白期間がある場合は、一連計算を認められないリスクがあります。
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返済内容を見直してもらい完済している場合
返済が苦しくなったなどの理由で貸金業者に返済内容を見直してもらい、完済しているというケースは注意が必要です。利息を無くすなどの示談書を交わしていることが多いためです。
このような場合、利息を無くすなどの示談書を交わしていることが多いため、和解が成立しているとみなされます。裁判で争う場合は、過払い金の説明がなかったなどの理由で和解の無効を主張する必要があります。
過払い金請求の裁判にかかる費用
収入印紙
過払い金請求の裁判をするためには、裁判所に訴状を提出する必要があります。その際に必要なのが「収入印紙」です。収入印紙の額は、裁判での請求額(過払い金の元金)によって変わることに注意が必要です。
請求額が大きければ、それだけ収入印紙の額も上がっていきます。例えば、請求額が10万円なら1,000円の印紙、50万円なら5,000円の印紙、100万円なら1万円の印紙となります。
予納郵券(郵便切手)
訴状を提出する際は「郵券(郵便切手)」を添付して予納することが必要です。これは裁判所から貸金業者に訴状を特別送達で送るときや、重要書類を郵送で受け取るときに使われるものです。東京地裁の場合は、6,000円の郵券を予納します。足りなければ追加納付を求められますが、余った場合には返還されます。
代表者事項証明書
裁判所に対して、被告の代表が誰であるかを示す証明書を提出する必要があります。法務局に行けば、貸金業者の「登記簿謄本(全部事項証明書)」を手に入れることができます。
しかし、アコムやプロミスなどの大きな会社は登記簿謄本の枚数が多いため、「代表者事項証明書」を交付してもらい、裁判所に提出します。代表者事項証明書とは、登記から代表者に関する部分を抜粋した内容の書類です。オンライン申請であれば郵送料込みで500円です。
司法書士・弁護士に依頼した場合の費用
自分で和解交渉や裁判をおこなうというのでなければ、司法書士や弁護士に過払い金請求を依頼することになります。一般的には「着手金」「成功報酬」「基本報酬」という3つに分けて支払います。
着手金
最初に支払うのが着手金です。費用については依頼内容などによっても変わることがあるため、事前に確認しておきましょう。当事務所のように、「着手金無料」というところもあります。
成功報酬
成功報酬は過払い金を取り戻せた場合に発生する費用で、過払い金がなければ支払うことはありません。
弁護士・司法書士会からガイドラインが出されており、裁判前の成功報酬は実回収額の20%となっています。裁判後の成功報酬は実回収額の25%です。
基本報酬
基本報酬は、貸金業者1社あたりにかかる費用です。1社あたり数万円程度に設定されていることが多いです。
司法書士・弁護士の日当交通費等
上記費用に加えて別途日当交通費などが請求される場合もあります。しかし、司法書士会では定額5万円以上の費用が禁止されています。弁護士の場合はさらに厳しい規定があります。
裁判費用は貸金業者に請求できる?
裁判に勝訴すれば、訴訟費用確定処分を経て、貸金業者に対して裁判にかかった実費を請求することができます。
収入印紙代と予納郵券、代表者事項証明書が実費となります。訴訟費用確定処分とは、貸金業者に負担させる訴訟費用の金額を裁判所に確定してもらうことです。
認められた費用については、過払い金の請求額と同時に強制執行が可能になります。ただし、貸金業者が全額負担となるためには、裁判での全面勝訴が条件となるのでご注意ください。
貸金業者の主張の一部が認められて請求額が減額されるという判決が出ると、それに応じて貸金業者が負担する裁判費用も減額されます。
裁判の途中で和解した場合(「裁判上の和解」)は、訴訟費用確定処分がありません。そのため、裁判費用を貸金業者に請求することができなくなります。
ただし、和解の条件として裁判費用を上乗せた金額を提示した場合は、貸金業者に応じてもらえる可能性があります。拒否して裁判に戻るよりは、多少の上乗せがあっても和解で解決したほうが、貸金業者にとってメリットがあるためです。
過払い金請求の裁判の流れ
1.訴訟提起する
過払い金の金額が140万円以下の場合は簡易裁判所に訴状を提出します。140万円を超える場合は地方裁判所への提訴となります。
その際には「訴状」はもちろんのこと、「証拠説明書」や「取引履歴」、「引き直し計算書」や「代表者事項証明書(または登記簿謄本)」などの必要書類を添えて提出します。同時に郵券の予納もおこないます。
2.口頭弁論
訴状の提出からおおむね1~2ヵ月後の平日に第1回期日が指定されます。日時は裁判所が決めるため、それに従って法廷に行くことになります。第1回期日は主張の確認がメインとなるため、さほど時間はかかりません。以降、およそ1ヶ月に1回のペースで裁判が進んでいきます。
弁護士や司法書士に依頼した場合は、和解などを除けば基本的に出廷する必要がありません。しかし、過払い金が140万を超える場合には地方裁判所となり、弁護士と司法書士で対応が異なるため確認が必要です。
3.判決
和解がなければ、裁判官が判決を下します。その後、貸金業者から控訴されなければ判決が確定します。その後は判決内容に応じて訴訟費用確定処分などに入ります。なお、貸金業者が控訴してきた場合には、地方裁判所で控訴審が開かれます。
過払い金請求・裁判、訴訟についてよくある質問
過払い金請求・裁判、訴訟 よくある質問1
Q:過払い金請求を裁判で解決する場合どのようなメリットがありますか?
A:過払い金請求を裁判で解決するメリットは、発生している過払い金を満額回収することができます。また、過払い金にかかる利息の回収もできます。
過払い金請求・裁判、訴訟 よくある質問2
Q:過払い金請求を裁判で解決する場合どのようなデメリットがありますか?
A:過払い金請求を裁判で解決するデメリットは、回収までの期間が長くなってしまうことです。また、ご自身で手続きをおこなう場合は、必要書類の準備や平日に裁判所に行かなければならないなどのデメリットがあります。
過払い金請求・裁判、訴訟 よくある質問3
Q:裁判になった場合、どのような費用がかかりますか?
A:裁判費用は、収入印紙、予納郵券(郵便切手)、代表者事項証明書などがあります。
過払い金請求・裁判、訴訟 よくある質問4
Q:みどり法務事務所は裁判までおこなってもらうことはできますか?
A:できます。当事務所では、お客様のご要望を伺い手続きを進めますので、相談時にお伝えください。