亡くなったご家族の過払い金請求を代理でおこなう方法
■もくじ
亡くなったご家族の借金を過払い金請求できるケース
返済中の場合
ご家族が借金を返済している途中で亡くなった場合、一般的には相続人である家族が債務を引き継ぎます。相続人は、被相続人の預貯金や不動産といったプラスの財産を相続しますが、借金などのマイナスの財産も引き継がなければなりません。
したがって、被相続人が返済中だったときには、相続人がしかるべき手続きをして債務を引き継がなければなりません。長期間の取引の場合、取引履歴を取り寄せて引き直し計算をすると、過払い金が生じていることが判明するケースもあります。
特にグレーゾーン金利が廃止される前の2010年以前に、被相続人が契約をしていた場合は、過払い金が生じている可能性が高いです。
過払い金がある場合、債務者は払いすぎたお金を返してもらえるよう、債権者に対して過払い金請求をすることができます。
被相続人が過払い金があることに気付かず、いまだこの権利を行使していない場合は、相続人が過払い金返還請求権を引き継いで債務者に請求できます。
取引履歴をチェックした結果、「利息制限法で定められている利息よりも多く支払っていた」、「引き続き返済中である」といった条件がそろえば、過払い金請求をしてお金を返してもらえる確率は高くなります。
過払い金請求には時効がありますが、時効は最後に取引をした日を起算日として計算されますので、現在も返済を続けている状況であれば時効によって権利が消滅する心配は少なくなります。
完済後10年以内
過払い金請求の時効が成立するのは、最後の取引から10年経過したときです。完済後10年以内であれば、まだ時効の時期を迎えていませんので過払い金請求をすることは可能です。
万が一、本人が債務を完済してから10年経過する前に亡くなってしまった場合は、相続人が過払い金返還請求権を相続します。
例えば、完済してから数年後にお金を借りた本人が亡くなってしまった場合は、時効が成立するまでまだ時間があります。権利を引き継いだ相続人は、引き続き時効を迎えるまでの間は過払い金請求ができます。
相続人が複数いる場合は、基本的に相続人の間で話し合って手続きを進めることになります。病気で意思表示ができない、といった相続人がいる場合は、手続きにも少し時間がかかることが考えられるため、早めに準備をしておく必要があります。
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亡くなった家族の借金を過払い金請求できないケース
完済から10年経ち時効を迎えている場合
法定利息の上限を超えた利息を払っていたときでも、10年という時効を迎えてしまうと過払い金請求の権利は消滅してしまいます。このような場合は、本人はもちろんですが相続人でも過払い金請求はできません。
過払い金の有無や時効が成立しているかどうかがわからない場合は、司法書士や弁護士などの専門家に調査してもらうこともできます。
アコムやプロミスなどの貸金業者の過払い金をチェックするときには、複数の借入れがそれぞれ別の契約でおこなわれた取引なのか、それとも同じ契約のなかでおこなわれていた取引なのかを確認するのが1つのポイントになってきます。
例えば、複数の借入れを別々の契約として扱う場合は、それぞれの借入金を完済した時期によっていつ時効が成立するかが異なります。
司法書士や弁護士などの専門家は、このような契約の確認や交渉も代行してくれます。ご遺族から過払い金の請求があると、貸金業者側でも情報の開示などに慎重になるケースがあります。
法律の専門家が間に入れば、必要な情報を入手して正しい方法で対応していくことができるので一度ご相談することをおすすめします。
利息制限法の上限金利内での取引
過払い金は、利息制限法で定められた利率を超えた利息が発生したときに生じます。したがって、利息制限法の上限金利内の利息でお金を借りているときには、過払い金は発生しません。
アコムやプロミスなどの貸金業者の債務を相続したときには、どのような場合に過払い金が発生するかをしっかりとチェックしておくことが大切です。
相続放棄をした場合
過払い金が生じていても、相続放棄をしたときには返還請求権を行使することはできません。相続放棄をすると、被相続人の財産や権利をすべて放棄することになります。
亡くなった故人の債務が多い場合は、家族が相続放棄をするケースも少なくありません。相続を放棄した場合、住宅や預貯金などの財産をもらうことはできなくなりますが、債務を引き継ぐ必要もなくなります。
このように相続放棄をすると故人の債務が残っていたとしても、家族は支払いを放棄できます。ただし、このような場合は過払い金を返してもらうこともできなくなってしまいます。
亡くなった方の借金の過払い金請求の手順
1.亡くなった方が借金をしていたか調べる
故人の過払い金を請求する場合、どの貸金業者でどのくらいの借金があったかを調べる必要があります。情報収集は手続きをするうえでの最初のステップですので、要領を押さえて1つ1つこなしていきましょう。
借金の状況を調べる方法
故人の借金の状況は、借金問題を専門としている司法書士や弁護士などの専門家に相談をすると、スムーズにわかることが多いです。
このような事務所で業務に対応する司法書士や弁護士は、多くの貸金業者に対して過払い金請求をおこなった実績があります。業者との交渉の仕方も心得ているため、効率良く必要な情報を得ることができます。
契約書、利用明細書、カードなどの確認をする
自分で故人の借金の状況を調べる場合は、貸金業者との契約書や借入、返済をしたときの利用明細書などを揃えることから始めます。
このような書類は、最初に貸金業者と契約をした日付や債務の金額、その後の取引状況などを確認するときに必要になります。
故人の取引履歴にアクセスをするときには、契約書や利用明細書がそろっていたほうが作業がしやすくなります。
貸金業者に問い合わせをする前の時点で書類を一式準備しておけば、開示された内容と照らし合わせることもできます。
信用情報機関に確認する
返済の途中で入金が遅れると、信用情報機関のデータなどにも登録されることがあります。信用情報機関が保持している情報は、一般的に法定相続人でも開示を請求することが可能です。
過払い金請求の手続きに着手する前には、このような信用情報機関のデータをチェックして過去の返済状況を確認しておくことも大切です。返済状況によっては、知らないうちに信用情報に傷がついていた、といったこともあり得ます。
信用情報機関のデータからは、ほかのサービスからの借入状況もわかることが多いので、できれば相続の前に確認しておいたほうがよいでしょう。
預金通帳を確認する
故人の預金通帳も、情報を知る1つの手がかりになります。口座からの自動引き落としにしていない場合、その都度自分の預金口座からお金をおろして、返済をしている人が多いです。
毎月同じ時期に現金を引き出している履歴がある場合は、返済にお金を充てていた可能性が大きいです。預金通帳を見れば、預金残高やほかの引き落とし状況もチェックできますので、過払い金請求の際に役立つことがあるでしょう。
2.貸金業者から取引履歴を取り寄せる
過払い金請求をするにはまず過払い金が発生する金利での取引があったかを調べる必要があります。取引内容を調べるには貸金業者から取引履歴を取り寄せます。
貸金業者は、本人や相続人から依頼があった場合に利用者の取引履歴を開示する義務があります。ただし、業者によってはこのような開示請求になかなか応じないこともあります。
さまざまな理由をつけて開示を遅らせているような気配が感じられたら、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
3.過払い金が発生しているか計算する
過払い金の有無を調べる際には、利息制限法で定められてる上限金利をまずはチェックしましょう。
利息制限法の借入元金が10万円未満の場合は20%、借入元金が10万円以上100万円未満の場合は18%、100万円以上の借入の場合は、上限金利は15%です。
取り寄せた取引履歴を見て、この利息制限法の上限金利以上の金利で取引をしていた場合は過払い金が発生しています。実際に過払い金の発生額を調べるには引き直し計算をおこないます。
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4.遺産分割協議で借金の相続人を決める
実際に手続きを始める前に、遺産分割協議も済ませておくことが重要なポイントです。無事に過払い金が返ってきた場合、相続人の間でお金を分ける必要があります。
遺産分割協議をしていれば、このようなプロセスで揉めることも少なくなるでしょう。ちなみに、話し合いの際に作成した遺産分割協議書は過払い金を請求する手続きでも必要な書類です。
このような書類がそろっていないと、スムーズに手続きを進められないことがあるので、準備をしておくことをおすすめします。
5.貸金業者に対して過払い金請求をする
準備がひととおり終わったら、過払い金請求をスタートします。請求の際には、後に状況を確認できるような方法を取るのがベスト。
電話だけでやり取りをしていると、聞き逃しや誤解が生じるリスクがでてくるため、できれば文書で交渉を進めましょう。
内容証明郵便などは、このような過払い金請求の際によく用いられています。話し合いがこじれたときのことを考えて、証拠を残せるようなやり取りをしていくことがポイントです。
亡くなった方の借金の過払い金請求に必要な書類
どのようなやり方で過払い金請求を進めるにしろ、手続きをするときにはいくつかの書類を準備しなければなりません。
例えば、亡くなった人の戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本などは、できるだけ早く準備をしておきたい書類です。この書類は、自治体の窓口に行けばすぐに発行してもらえますので、比較的簡単に取得できます。
相続人が何人もいる場合は、遺産分割協議書も用意しておく必要があります。相続人が1人しかいないときにはこの書類は必要ありません。
故人の債務が多く、やむを得ず相続放棄をする場合は、相続放棄申述受理証明書も必要です。相続放棄をしたいときには、管轄の家庭裁判所に相続放棄をする旨を申述します。
申述が受理されれば、相続放棄申述受理証明書が発行されます。相続放棄の申述は、被相続人が亡くなった事実を知ってから3カ月以内におこなう必要がありますのでご注意ください。
また、故人の遺言書があるケースでは、過払い金請求の際に遺言書を準備しておく必要があります。遺言書によって法定相続人以外の人が相続人に指定されているときは、財産や権利の分け方が一般的な方法と異なります。
遺言書が見つかったような場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
過払い金請求・代理についてよくある質問
過払い金請求・代理 よくある質問1
Q:過払い金請求を家族の代わりに代理でおこなうことはできますか?
A:原則として過払い金請求は本人がおこなわければなりませんが、病気やケガなどで本人が動けない場合は、委任状を作成することにより代理で手続きをすることができます。
過払い金請求・代理 よくある質問2
Q:亡くなった夫が借金をしていたのですが過払い金請求できますか?
A:できます。亡くなった方の過払い金請求をする場合は、相続人であるご家族が過払い金請求をすることができます。ただし、借金を返済中か完済しているかで手続きの方法が異なるので、当事務所にご相談ください。
過払い金請求・代理 よくある質問3
Q:相続放棄をしたのですが過払い金請求できますか?
A:できません。相続放棄をした場合は、被相続人の財産や権利をすべて放棄することになるので、過払い金請求の権利もなくなります。
過払い金請求・代理 よくある質問4
Q:亡くなった主人がだいぶ昔に借金をしていたのですが過払い金は発生していますか?
A:借金を完済している場合、最終取引日から10年以内に過払い金請求をしないと時効になってしまいます。借金をいつ完済したかわからない場合は、早急に調査をおこなってください。当事務所では、過払い金の調査や計算を無料でおこなっておりますので、お気軽にご利用ください。