任意整理後支払えなくなったらどうなる?
任意整理をしたいと思っている方で、任意整理をした後に支払いが順調にできるかどうか不安に思う方もいるかと思います。実際に任意整理を行った後に支払いが滞納してしまうと滞納期間によっては貸金業者から一括請求されてしまいます。
今回は任意整理後に支払いを滞納してしまった場合の対処や手続きの流れについてご紹介します。
任意整理後に支払いが滞納した場合
任意整理を行った後、支払いを分割で行っているかと思いますが、支払いを滞納してしまうと、以下のようになります。
滞納期間 | 対処方法 |
---|---|
1か月 | 全額を請求されていない場合、滞納を解消し引き続き継続 |
1~2か月 | 再和解、追加介入 |
2か月以上 | 再和解をしてもらえない場合、個人再生、自己破産も検討に入れる |
このように、支払いの滞納期間で、出来る対応が変わっていきます。
一時的に支払えない場合(2か月以内)
たとえば「今月は出費が多くて支払いが厳しい」といった場合、お金の用意ができたらすぐに返済すれば問題ありません。返済が通常の期限に間に合えば、翌月以降も継続して返済が可能です。
2か月以上支払いができなくなった場合
「怪我や病気で仕事を長期で休み、収入が減った」「転職をしたら以前より収入が減り返済が厳しくなった」等の理由で、支払いが2か月分滞納してしまうと、和解契約の中に含まれている期限の利益を損失してしまい、多くの場合は貸金業者から全額一括請求が来てしまいます。
代理人が手続きを行なったケースでは、代理人が署名捺印し保管している場合もあります。契約書(示談書)には通常、「返済が2回以上遅れた場合」「返済が〇万円分以上、滞った場合」等に残額を一括請求する、と記載されている場合があります。返済が滞れば、代理人または債務者のもとに請求書や通知書が送付されますので、注意が必要です。
期限の利益喪失とは
債務者が「期限までは支払いをしなくてよい」と主張できることを期限の利益といいます。貸金業者は「その期限内であれば支払がなくてもよい」と認める和解契約をしています。この期限の利益は2回ほどの支払い延滞でなくなり(喪失)、貸金業者から全額一括請求されます。
この期限の利益の喪失は貸金業者によって変更がありますので必ず確認しましょう。もし全額一括請求の通知が来てしまった場合、「再和解」か「追加介入」という手段を行います。
再和解とは
再和解とは貸金業者ともう一度和解契約を結ぶ手段です。司法書士や弁護士に依頼をして、返済金額の見直しを行います。これによって、一回目と同じ内容で和解契約を結べる場合もあります。
デメリットとしては、期限の利益喪失をしている場合、和解条件は一回目の時よりも厳しくなってしまう可能性があることです。一度目の任意整理よりも条件が悪くなるかもしれません。
例としては、一度目の和解のときには「支払い滞納が2回分になったら一括請求します」という条件だったのが、二度目の和解のときには「支払い滞納が1回あったら一括請求します」という条件になったり、一度目の和解は「5年払い」であったのが、支払期間を短縮されて、毎月の支払い額が上がったりすることもあります。
また、再和解して分割払いに戻っても、残りの借金に遅延損害金が付く場合もあります。任意整理後に返済を滞納してしまうと今後の生活にも大きく影響してしまうのです。
追加介入とは
借金の返済が難しくなった理由が、収入が少なくなってしまった等の場合、再和解をして一回目と同じ金額で返済を継続しようとしても、また滞納してしまう可能性があります。再和解をしても返済が難しい場合は、追加介入を行います。
追加介入とは、再和解をしても支払いが厳しい場合に行う手段です。本来、任意整理は貸金業者と直接交渉を行って、和解契約を結びます。一回目の任意整理では対象にしていなかった貸金業者と追加で任意整理の手続きを進めることができます。これにより、毎月の借金の返済総額を減らし、一回目の任意整理の借金返済に充てることができます。
また、一回目の任意整理では「車を手放せないので任意整理の対象から外したい」や「保証人に迷惑をかけたくない」等の理由で任意整理の対象から外していたけれど、状況が変わって任意整理ができるようになった場合は、そちらも一緒に追加介入ができます。
留意点として、任意整理の対象から外した借金がないと追加介入はできません。もし可能であれば、任意整理の話を家族にして、もしも家族に借金があれば追加で任意整理を行い、家計の改善を図ることができるケースもあります。
再和解同様に、一回目の任意整理で滞納し、期限の利益を損失しているので、和解条件は厳しくなる可能性があります。
再和解に応じない業者もいるので注意が必要
一方で、一度任意整理をして和解した後に返済を滞納してしまっても、条件が厳しくなりますが、任意整理後再和解することは可能ではあります。
司法書士や弁護士と貸金業者が話し合いをして、再和解に進めていくのが一般的ですが、再和解に応じない業者も中にはいますので注意が必要です。
一度、任意整理をした際に「毎月支払います」という契約をして和解したものの、状況が変わって返済が困難になり、「やっぱり支払えなかったので、再和解してほしいです」となっても受け付けてくれないのは当然と言えばそうかもしれません。そのため、再和解が通っても条件が一回目よりも厳しくなってしまったりします。
再和解も追加介入も厳しい場合
「再和解をしても今まで通りの返済額を支払うのは厳しい」「追加介入できる借金がもうない」等の場合は「個人再生」か「自己破産」に切り替える必要があります。
個人再生とは
個人再生とは、任意整理とは異なり、裁判所を介して借金を減額してもらう債務整理の手続きです。司法書士や弁護士に依頼をして、裁判所に提出した再生計画が認可されると、原則として借金が5分の1に減額されます。
そして、減額された借金は3~5年で完済していきます。また個人再生は、「住宅資金特別条項」というものがありますので、住宅ローン等の住宅資金貸付債権については、今まで通り返済を継続できます。
ですので、家を残しつつ住宅ローン以外の借金を個人再生によって減額・分割払いとすることができます。減額されるとはいえ、残りの借金と一緒に住宅ローンも返済していくため、一定の収入が必要になります。
自己破産とは?
自己破産と聞くと嫌な印象を受けがちではありますが、破産法という法律のもと、裁判所を介してすべての借金を免除してもらう手続きです。
支払いが困難になった借金を手元にある財産をお金にして、適正かつ公平に貸金業者への清算を行います。これによって、一定の財産は手放すことになりますが、税金などを除いたすべての借金は免除されます。
財産はすべてではなく、99万円以下の現金も自由財産として所持が可能ですが、一方、20万円以下の財産であっても、日常生活に認められない財産については処分される可能性もあります。このように、裁判所で認められた財産は手元に残すことができますので、借金をすべて免除して、またやり直すことができます。
任意整理後に会社をリストラにあってしまった・病気になって働けなくなった等の事情で、安定的な収入が一定期間以上見込めない場合は自己破産を選択することも視野に入れましょう。
返済が厳しいと感じたら再度専門家に相談
任意整理後に支払いができなくなる事情はさまざまです。任意整理して支払いが順調にできていても、その後事故や病気をして休業や失業したり、リストラや転職したり等の理由で収入が減ることもあります。
任意整理をした後に借金を滞納してしまった後の手続きとして、「再和解」「追加介入」「個人再生」「自己破産」と紹介しましたが、どの手続きをするにしても、まずは相談して自分に合った手続きを選択していきましょう。