過払い金請求を自分でする方法とデメリット・リスク

専門家を頼らずに自分で過払い金請求をすれば、手数料を支払う必要がなくなります。ただし、自分で過払い金請求をする場合はデメリットもあります。

ここでは、自分で過払い金請求をする方法と注意すべきデメリットを解説していますので、しっかりと理解してから手続きをおこなってください。

自分で過払い金請求する方法

1.貸金業者から取引履歴を取り寄せる

自分で過払い金請求を場合、まずは貸金業者に取引履歴を請求することから始めます。取引履歴とは、契約内容や貸付・返済の金額などが日付とともに記録されたものです。

この取引履歴をもとにいくらの過払い金があるかを計算することになるので、過払い金請求をおこなう上で必要不可欠な書類です。貸金業者は取引履歴を保存・開示する義務があるので、借主が取引履歴を請求したら対応しなければなりません。

貸金業者に開示請求書を提出することで取引履歴を請求することができます。この開示請求書を手に入れる方法としては、貸金業者の公式サイトからダウンロード、最寄りの支店で受け取り、電話で請求の3つの方法があります。

開示請求書を手に入れたら、必要事項を記入し免許証などの本人確認書類のコピーと一緒に貸金業者へ郵送します。基本的には1か月以内に取引履歴が郵送されてきますが、1か月経っても送られてこない場合は貸金業者に問い合わせましょう。

特に完済から10年近く経っている場合は過払い金請求の時効が迫っているので、取引履歴を待っている間に時効が過ぎないようご注意ください。

2.引き直し計算で過払い金の金額を調べる

取引履歴が届いたら、過払い金がいくらになるかを計算します。過払い金とは利息制限法の上限を超えた金利で返済をおこなったことによって発生します。

そのため、利息制限法の上限金利で利息を計算し直すことで、過払い金がいくらかを知ることが可能です。この適正な金利での再計算を引き直し計算と言います。

引き直し計算は計算する量が多く間違えやすいので、電卓をたたいて自分で計算するのではなく、無料で利用できる引き直し計算用ソフトとExcelを使うようにしましょう。

計算用ソフトによって使い方は異なりますが、基本的には取引履歴に記載されている内容を入力することで過払い金が計算されます。

返済の途中で借入れを追加したり、完済と借入れを短い期間で繰り返したりしていると、計算が複雑になるので間違わないようにご注意ください。

3.貸金業者へ過払い金請求

引き直し計算をして過払い金の金額がわかったら、貸金業者へ過払い金請求書という書類を送り返還請求をおこないます。

過払い金請求書には、請求書作成日時、貸金業者の住所と宛先、自分の住所氏名、過払い金が発生している旨、過払い金の金額、支払い期限と支払先の口座番号などを記載します。

過払い金請求書自体には決まった書き方があるわけではないので、上記の必要項目がしっかりと記載されていれば問題ありません。

ただし、内容証明郵便で送る場合には郵便局で決められたルールに沿って書く必要があります。用紙などについては特に決まりはないので、パソコンで作成しても良いですし、手書きでも問題ありません。

過払い金請求書を貸金業者に送る際は、内容証明郵便で送ることが望ましいです。普通郵便で送ってしまうと、貸金業者へ届いたかどうか確認することができず、受け取っていないと主張されて請求を無効にされても反論することができません。

その点内容証明郵便ならば、過払い金請求書をいつ貸金業者に送ったか証明することができるので、このようなトラブルを未然に防ぐことができます。

内容証明郵便で送る場合、送る請求書のコピーを2部用意しておかなければなりません。これは送り主である自分と郵便局用の控えです。控えはコピーでなくても問題ありませんが、その場合は原本と一字一句違わないように書き写さなければならないのでご注意ください。

4.貸金業者と和解交渉・裁判

貸金業者に過払い金請求書が届くと、貸金業者から電話がかかってきて和解交渉が持ち掛けられます。和解金として提示される金額は請求した金額よりも少ないことがほとんどです。

ここで、その金額での和解に応じるかどうかを決めなければなりません。和解に応じる場合はそのまま返金へのステップへと移りますが、和解しないのであれば裁判で争うことになります。

訴訟を起こすためには、訴状、証拠説明書、取引履歴、引き直し計算書、貸金業者の登記謄本を用意し、管轄の裁判所に提出します。

訴訟を起こした時点で、貸金業者から訴訟前よりも良い条件で和解を提案してくることがあります。その和解内容で満足できるのならば、判決まで行かずに和解することも可能です。

5.貸金業者からの返金

和解成立および勝訴判決が出たら、貸金業者から過払い金が返金されます。返金方法は過払い金請求書で記載した口座に振り込まれるので、入金されているか確認できたら過払い金請求は完了です。

自分で過払い金請求をする場合のデメリット

過払い金請求を自分でおこなうことは可能ですが、注意すべきデメリットがいくつかあります。

デメリットを知らずに自分でおこなうと、失敗してしまう恐れがあります。過払い金請求で失敗しないために、どのようなデメリットがあるかを把握しておきましょう。

1.時間・手間がかかる

過払い金請求を自分でおこなう場合、取引履歴の請求、引き直し計算、過払い金請求書の作成、和解交渉および裁判を全て自分でおこなわなければなりません。

普段からこのような作業に慣れていない方からすると、これらの作業はとても面倒で手間がかかるものです。特に時効まで猶予がないときは手間取ってしまうと時効が成立して請求できなくなるリスクがあります。

また、自分で取引履歴の請求をおこなった場合、司法書士や弁護士などの専門家に頼むよりも時間がかかることがあります。専門家からの請求は優先される傾向にあるため、個人の請求は後回しにされてしまいます。

自分で過払い金請求をする場合は、これらのことを踏まえた上で時間的に余裕を持って行動する必要があります。

2.家族や会社に借金がばれる可能性がある

自分で請求をおこなうということは、当然窓口は自分自身になります。一人暮らしの場合は問題ありませんが、家族と同居している場合は注意が必要です。

貸金業者からの電話を家族が受けたり、取引履歴などの郵便物を家族が見てしまったりして、借金をしていたことがばれてしまうリスクがあります。

その点、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すればそこが窓口となってくれるので、家族に借金が知られるリスクが少なくなります。

専門家からの連絡は自分の携帯を指定し、連絡の時間帯を伝えておけば、過払い金請求を依頼していることも知られずに済むでしょう。

3.過払い金が少なくなる

貸金業者は一般の方が相手だと強気に和解交渉に臨む傾向があります。不当に低い金額の和解金を提示されたにもかかわらず、その金額が妥当かわからずに和解してしまうことも珍しくありません。

自分で過払い金請求をおこなう場合には、和解交渉への準備を怠らずに毅然とした態度で臨む必要があります。

自分でやる場合はブラックリストに注意

自分で過払い金請求をおこなう場合、気をつけておこなわないとブラックリスト入りになってしまう可能性があります。

ブラックリストに入ってしまうと、ローンを組んだりクレジットカードを作成することができなくなってしまいます。どのような場合にブラックリスト入りしてしまうのか確認しておきましょう。

借金を返済中の場合

借金を返済中に過払い金請求をおこなうとブラックリストにのってしまう可能性が高いです。

返済中に過払い金請求し、取り戻した過払い金で現在の借金を0にできない場合は、債務整理とみなされて5年間ブラックリストにのってしまいます。

返済中に過払い金請求をする場合は、過払い金で借金を0にできることを確認してからおこなってください。

クレジットカードのショッピングの利用がある場合

請求先が発行しているクレジットカードのショッピングを利用している場合も、過払い金請求によってブラックリストにのる可能性があります。

カードローンを使用していれば債務が残っていると考えやすいですが、実はショッピングであっても支払いが済んでいない分は債務としてみなされます。

貸金業者に対して債務が残った状態で過払い金請求をすることになるので、上記と同様に債務整理と見なされてブラックリストにのってしまいます。過払い金請求は、クレジットカードのショッピングで支払いが残っていないか確認した上でおこなってください。

請求先と合併した業者から借入れがある場合

請求先の貸金業者に吸収合併された貸金業者からの借入れがある場合、請求先の貸金業者に対しての債務が残っているのと同じ意味になります。

この状態で請求先の貸金業者に過払い金請求をすると、債務整理をおこなったとしてブラックリストにのってしまいます。

過払い金が0になってしまうリスク「ゼロ和解」に注意

返済をおこなっている途中で過払い金請求をしようと取引履歴を請求すると、「残債務を0円にするので和解してくれないか」と提案されることがあります。これをゼロ和解と言います。

貸金業者は取引履歴を請求された段階で、請求者に過払い金が発生していないかを確認します。ここで過払い金が発生していることが判明し、そのまま取引履歴を開示してしまうと、過払い金請求されてしまいます。それを避けるためにゼロ和解を持ちかけてきます。

返済がなくなるので得をしたように感じますが、この提案に乗ってしまうと本来もらえるはずの過払い金が受け取れなくなり損をしてしまいます。

ゼロ和解で得をするのは貸金業者なので、和解には応じないようご注意ください。

専門家に依頼するメリット

専門家に依頼することで得られるメリットとしてまず挙げられるのは、面倒で難しい計算や手続きを全て任せることができるという点です。

これにより手間を減らすことができるだけでなく、引き直し計算のミスや書類の不備で請求を無効にされるリスクもなくなります。

また、専門家は貸金業者との交渉にも慣れているので、不当な金額で和解をしてしまう可能性が低くなります。さらに和解が決裂して裁判へと進んでも、法的知識の必要な裁判の準備を任せることが可能です。

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