個人再生の給与所得者等再生について

個人再生という債務整理の手続きをご存じですか?個人再生とは、裁判所を介して債務の減額や免除、長期の分割払いの変更ができる救済措置です。これにより個人の経済的更生をはかることが可能です。

個人再生には、自営業者や収入が安定していない方も利用できる「小規模個人再生」と毎月定期的な収入がある会社員やアルバイト等が利用できる「給与所得者等再生」という手続きがあります。

このページでは、個人再生の給与所得者等再生がどんな手続きなのか、条件などについて詳しくご説明していきたいと思います。

個人再生の給与所得者等再生とは?

給与所得者等再生とは、裁判所が認可をして再生計画を進めることができる手続きです。

小規模個人再生では、裁判所を通して再生計画の同意を債権者から得なくてはいけませんが、給与所得者等再生にはこの工程がないため、債権者に反対されるかもしれないと不安に思う方には適した手続きとなります。

再生計画を認可してもらうには要件を満たす必要がある

個人再生の再生手続きを開始する際に、満たさなければならない要件があります。それらは再生手続き開始の時点で満たされているか判断されるためさほど問題ありません。

しかし、再生計画認可の要件は、再生計画認可または、不認可・棄却決定する際に判断されるため、あらかじめ確認しておく必要があります。

個人再生の再生計画を認めてもらう前に、「個人再生特有の再生計画認可の要件」を満たす必要があるため、ご自分がこれらの要件を満たしているか、担当している司法書士や弁護士と確認してください。

民事再生法231条2号・3号・4号、241条2条5号以下引用

第二百三十一条

第一項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第百七十四条第二項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第二百二条第二項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。

第二項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。

(1号) 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。

(2号) 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第八十四条第二項に掲げる請求権の額を除く。)が五千万円を超えているとき。

(3号) 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円を超え五千万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第八十四条第二項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。

(4号) 第二号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき。

(5号) 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。

第二百四十一条

第一項 前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。

第二項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。

(1号) 第百七十四条第二項第一号又は第二号に規定する事由(再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合については、同項第一号又は第二百二条第二項第二号に規定する事由)があるとき。

(2号) 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。

(3号) 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第二百二条第二項第三号に規定する事由があるとき。

(4号) 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。

(5号) 第二百三十一条第二項第二号から第五号までに規定する事由のいずれかがあるとき。

(6号) 第二百三十九条第五項第二号に規定する事由があるとき。

(7号) 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。

(イ) 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前二年間の途中で再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十四条第二項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額

(ロ) 再生債務者が再生計画案の提出前二年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額

(ハ) イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額

第三項 前項第七号に規定する一年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。

引用元:電子政府の総合窓口e-Gov

再生計画認可の要件まとめ

上記の引用文を簡単にまとめますと以下の要件になります。

  1. 再生債権額が5,000万円以下であること
  2. 再生計画に基づく弁済額が民事再生法231条2項3号から4号に定める最低弁済額を下回らないこと
  3. 清算価値保障原則を満たしていること
  4. 住宅資金特別条項を利用する際は、再生計画に住宅資金特別条項の定めていること

給与所得者等再生の条件

また個人再生の再生計画認可要件とは別に、給与所得者等再生特有の再生計画認可要件もあります。こちらの要件も満たされていなければ給与所得者等再生の手続きが行えませんので注意が必要です。

  1. 給与などの定期的な収入を得ていること
  2. 継続的な収入の額の変動の幅が小さい(20%まで)と見込まれていること
  3. 過去の7年以内に個人再生や自己破産の手続きを行っていないこと
  4. 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述をすること

会社員で給与を毎月もらっている方でも、収入額の変動が20%以上だと利用できない可能性があります。給与所得者等再生の要件が満たせているか、担当している司法書士や弁護士ときちんと確認してください。

給与所得者等再生を利用できるのはどんな人?

給与所得者等再生を利用できる人はどんな人なのか気になりますよね。名前から判断すると会社員が対象なのかと思いますが、実はほかにも利用できる人がいますのでご説明していきます。

会社員・公務員 利用できますが、年間20%を超える収入の変動がある場合や収入の金額が少ない場合、利用できません。
非正規社員 収入が安定していて、金額が足りていれば利用できる可能性があります。
年金受給者 年金は安定した収入として判断されるため利用できる可能性があります。
自営業 給与所得者等再生を利用できるほど、収入が安定していないと考えられるため。
無収入 収入がない人は利用できません。

給与所得者等再生のメリット・デメリット

給与所得者等再生は、小規模再生とほぼ変わらない条件で行うことができます。給与所得者等再生は会社員等の収入が安定している必要がありますが、他にもメリット・デメリットがございますのでご説明していきます。

また、個人再生自体のメリット・デメリットもございますので、そちらも参考にしてください。

給与所得者等再生のメリット

給与所得者等再生のメリットについてご説明していきます。

債権者の同意が必要ない

小規模個人再生では再生計画に債権者の同意が必要になります。もし再生計画に債権者の過半数の反対があると裁判所に否決され、個人再生の手続きができなくなる可能性があります。

一方、給与所得者等再生には再生計画に債権者の同意は必要ありません。債権者に反対されても、関係なく裁判所に認可してもらえます。これが給与所得者等再生の最大のメリットといえます。

給与所得者等再生のデメリット

続いて、給与所得者等再生のデメリットについてご説明します。

小規模個人再生よりも返済額が大きくなる可能性が高い

給与所得者等再生は小規模個人再生よりも返済額が増える可能性が高いです。個人再生では「最低弁済額」という「最低これだけの金額を返済すれば、残金は免除する」という金額が民事再生法で定められています。

給与所得者等再生の最低弁済額は「法定可処分所得の2年分以上に設定しなければならない」ため 、小規模個人再生の最低弁済額よりも高く設定されてしまいます。

給与所得者等再生を利用した方がいいのはどのようなケース?

給与所得者等再生のデメリットは返済額が大幅に変わってしまいます。「だったら小規模個人再生を選びたい」と思う方もいるかもしれません。

ですが、こういったケースの方々は、給与所得者等再生を利用した方が結果的に手続きを認可されやすくなりますので、それぞれケース別でご紹介していきます。

債権者の半数以上が反対している場合

個人再生の再生計画の手続きでは、債権者の半数以上が反対している場合、小規模個人再生では裁判所で再生計画案が否決されてしまいます。その場合、個人再生に失敗してしまいます。

その点、給与所得者等再生では債権者が半数以上反対しても再生計画案を認めてもらうことが可能です。

債権額の2分の1以上を持っている債権者が反対している場合

小規模個人再生では、債権額の2分の1以上を所有している大口の債権者が再生計画を反対されてしまうと個人再生が否決されてしまいますが、給与所得者等再生なら関係なく認可してもらえます。

もしもこのように債権者に再生計画を反対される恐れがある場合、給与所得者等再生の手続きが確実です。

給与所得者等再生についてのお悩みはみどり法務事務所にご相談ください

個人再生の手続きは個人で行うのはとても大変です。また、自分が小規模個人再生なのか給与所得者等再生なのか判断するのも難しいかもしれません。

給与所得者等再生の最大のメリットはほぼ強制的に借金の金額が減額されることですが、実際どのくらい減額されるのか不安に思われている方・給与所得者等再生が自分に適しているかお悩みの方は、一度みどり法務事務所にご相談ください。

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